第一部 黎明期(心底癒しの贈り物)

トモロウ爺さんちには一台のロボットが居た。

一人暮らしを続けていたトモロウが、役所の制度を利用して一台のロボットを頼んだのだ。

「大体トモロウは糞の時間が長いんだよな」

「よさないか、トモロボ。お客さんの前で」

「あ、この間来たシズさんて娘は待ちくたびれて帰っちまったね。へっ、娘なんてっても八十過ぎのばあさんだ。トモロウ、あんただよ、人間老けちゃしまいだねって言ってたのは」

「本当のことを言ったまでだ。いや、本当のことをこんなときに言わんでもいいだろう」

万事そんな感じで、何を言い出すのやら分からないロボットであった。

役所には様々なタイプのロボットが用意されていた。

例えば足腰の弱い人には歩行支援ロボットがあり、同じ歩行支援ロボットでもまずはオーソドックスな手引きロボット、それに加えて進行先の障害物を片付ける露払いロボット、おんぶ好きの夢を叶えるおんぶロボット、身の危険を感じて止まない人には安心を与えてくれるSPロボットが用意されていた。

そして話し相手がいない寂しさを紛らわせたくて優しさにも飢えていた爺さんのトモロウは、おしゃべりロボットを頼んだのだった。

でも、どうもひと月前から部品の一部が壊れているらしく、状況把握パーツから気遣いパーツへの回路が破綻している、そうトモロウは想像していた。

「直すって。なぜ」

訪ねて来た市の職員に唖然とした顔でトモロウが訊いた。

「だって、心穏やかではありませんよね。何をしでかすか分からないロボットでは。『長寿癒しのすぐ行く課』の私としましても、故障してでき損ないとなったロボットは回収して修理またはスクラップの対象だと思いますです」

足を投げ出し、膝をさすっていたトモロウの手が止まった。

「あんたそうやって考えているのかい。年老いて壊れちまった老人は、何をしでかすか分からない。回収して修理またはスクラップもんだって」

「すぐ逝く課、だもんね」

トモロボが回路に浮かんだ冗句のアイデアをさも自慢気に言った。そして首の前あたりで手を横に切って、白目を剥く仕草も加えてみた。