【前回記事を読む】韓国人学生と1対1の筆談を交わした。中には、反日思想を持つ学生もいて、「朝鮮戦争」の内容について触れると……

第一講 水先案内人がやってきた

その後英語の勉強に力を入れ、大学でもESS(英会話サークル)に入り、国際関係を専攻し、休みにはバックパックを担いで海外に出かけた。特に韓国に関心があり、大学でも韓国語を学び、卒論も韓国の経済発展に対する日本の直接投資の役割について書いた。

浜田がなぜ韓国に興味を持ったかと言うと、一見日本と似ているようであるが、違うところは違っていて、そのちょっとした違いを知るのが面白かったのだ。

例えば韓国語は日本語と全然違うように聞こえるが、漢字の読みや語順や「てにをは」がほとんど日本語と同じであるとか、キムチとお新香の違いであるとか、韓国旅行に行って食べたピビンパや豚肉の焼肉がおいしかったこととか、勉強や旅行したりしているうちに韓国の面白さを発見していったと言えるだろう。

韓国の面白さは韓国語の面白さとも言える。特にハングル文字は一見難しそうであるが、表音文字であり極めて合理的な文字である。ひらがなカタカナの方がよっぽど難解だと、ハングル文字を勉強すると思うだろう。見た目(ハングル文字)、聞いた感じ(韓国語は発音は難しい、母音・子音とも独特である)とも浜田はとても惹かれるのだ。

講師浜田は国際省に入るときに、韓国語の研修を希望したが、それは叶わずアラビア語が割り当てられた。それは大きな大きな人生の分岐点だった。

国際省に入り順調な人生のように見えたが、エジプトでの語学研修中に人生は暗転する。ホームシックによる任期途中での帰国。一人前の外交官になるために、国費で勉強させてもらえるからには、語学の習得に邁進(まいしん)しなければならない。その使命感が浜田を追い詰めていった。

また遠距離恋愛が破局に終わり、語学の勉強も深刻なスランプに陥り、公私両面、心身両面で、意識的にも無意識的にも負荷がかかる状態だった。浜田は頑張りすぎて、燃え尽きてしまったのだ。病院で診てもらうと、気分障がい(うつ病)。それが彼に付けられた病名だった。もはや国際省での激務に耐えられる心身状態ではない。

浜田は辞職した。学生時代、公務員試験の模擬試験を受験予備校で受験しており、全国一位の成績を収めたこともあった。そうした体験を思い出し、公務員試験の講師になった。それから十年とちょっと経とうとしていた。しかし、病名、それだけは会社に隠している。いわゆるクローズ(病名を周囲に知らせない)で働いている状態だ。

西しずか。室町学院大学社会学部公共政策学科三年生。ごく普通の女子大生。

K‒POPが大好きで、テレビのハングルに関する情報番組を見るのが楽しみ。

進路について何となく考えてみたのは、キャリアセンター(学生課・進路就職課から派生した組織で、就職活動についての情報を学生に提供したり、資格試験講座を受け付けたりしている)での「就職ガイダンス」に出席したのがきっかけだった。