欲しいという感情だけが先走って、何が欲しいかが特定できないまま、手当たり次第に掻き集めている。
いいねの数。試験の順位。クラスでの立ち位置。男たちの視線。それが全部、愛情の代替品だったとしたら、私はずいぶん効率の悪い調達をしてきたことになる。タイパを求めるZ世代、卒倒。
愛情障害の行く末というのはこんなにも、みすぼらしくて、救いようのないものなのか。
まあ何だっていい。代替品でも何でも、集め続ける。
K大学の入学式まで、あと4ヶ月ある。その4ヶ月で何をするか、もう考えている。
どのコミュニティに入るか。どのサークルが使えるか。どの教授が評価基準として機能するか。人間のリサーチは高校より複雑になるだろう。
多様性が増す。出身も価値観も違う人間が集まる。それはつまり情報量が増えるということで、情報量が増えれば精度が上がる。やりがいがある。
この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば。
中学の授業で暗記したこの歌を、今また思い出した。
満月を見上げながら「この世は全部俺のもんだ」と歌い上げた藤原道長の傲慢さを、あの頃の私は羨ましいと思った。今は毛ほども羨ましくない。
なぜなら今の私には、その傲慢さを本気で目指す気持ちがある。
傲慢であることを恥じない。欲張りであることを恥じない。汚い手を使うことを恥じない。地獄行きの切符はもう手の中にある。切符を持ったまま現世で立ち止まる理由がどこにある。大手を振ってあくどいこと、何でもしてやる。
本の男の家では確かにあった自分の輪郭が、今はまた薄い。
薄くていい。薄い方が傷つかない。傷つかない方が前に進める。
それが正しい選択だと、私はこれからも信じ続ける。
信じ続けることにする。
インタビューの掲載誌が届いたのは、それから1ヶ月後だった。写真の中の私は笑っていた。とても良い笑顔だった。見知らぬ中学生が、この顔を見て高校に憧れを持つかもしれない。この顔に騙されて、キラキラした高校生活を夢見るかもしれない。
ごめんね、とは思わなかった。
それくらいの嘘は、この世界に溢れている。私が謝る必要はない。世界を受け入れなさい。ざまあみやがれ。
掲載誌を鞄にしまって、私は次の授業に向かった。
次回更新は8月4日(火)、16時の予定です。
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