「そうだよ。もう傷付くのが怖い。誰かを信頼するのって大事な事だけど、貫いて辛い思いをするなら、もう嫌」
「俺は亜紀ちゃんの友達だから、結婚しよ、とか言わないけどさ、信頼はして欲しいな」
「南君……」
「信頼して損はないと思うよ。俺は優良物件だから」
おどけて言う南君に、気持ちが救われるような思いがした。もしも、俊雄さんと出会う前に南君に出会って付き合っていたら、どれだけ幸せだろう、と思える程に。
食事が終わって、私は自分の部屋で離婚届に必要事項を記載した。後はこれを俊雄さんの家に郵送すれば良い。それで全てが終わる。全てが――。
ポタリと涙が手に落ちた。
駄目駄目、これからはもっと強く生きていかないと。一人で頑張らないといけないんだから。
封筒に離婚届を入れ、鞄にしまった。
明日これを投函して、後は俊雄さんが区役所に届けてくれれば良い。そこで、ジ・エンド。
「あ、私、バツイチになるんだ……」
今度は何だか笑いが込み上げてきた。ついこの間婚姻届けを書いたばかりなのに、もう離婚届。展開の早さに改めて驚くと共に、私と俊雄さんは縁がなかったんだと、しみじみと思うのだった。
そして、もう俊雄さんに会う事はないけれども、それでも彼と過ごした二年間は幸せだったと思う。
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「もう戻らない」あの結婚で何を失い、何を得たのか――離婚届を出した翌朝、すべてが腑に落ちた
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