俳句・短歌 歌仙 2020.10.11 歌集「ひとり歌仙」より三首 ひとり歌仙 【第11回】 田中 靖三 “気がつけば超電導の虜なり” ――科学と日常を結びつける新しい文芸の形。 電気抵抗ゼロで世界に革新をもたらす夢の科学技術「超電導」。日々刻々と新しい技術に取って代わられる科学の世界において、人の寿命にも伍する100年以上の歴史を刻む「超電導」を、「5・7・5」の長句、「7・7」の短句を詠み重ねる歌仙方式で花鳥風月を織り交ぜ、詠いあげる。科学叡智の結晶「超電導」は、歌仙の響きと共にやさしく世界に溶けていく。 松尾芭蕉が作り上げたと言われるこの型式の、独吟による「ひとり歌仙」を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 幽寂に揺るる葉音や夏の月 涼み浄瑠璃浪速の夕べ 月よりもずつと冷えるよ冷凍機 希釈冷凍断熱消磁 ぼんぼりに花の一枝差し掛かり 散るを惜しみて暖簾をくぐる
小説 『にゃん太郎の冒険物語』 【新連載】 作間 瓔子 僕をかわいがってくれたのは初めだけ。そのうち気のない挨拶をして、他の用事に移ってしまうようになった。 最近は猫ブームらしいが、僕らに癒やしを求める人間たちの何と多いことか。一口に猫と言っても、人間に人種があるのと同様、猫にも品種があるのだ。僕はおそらく『ボンベイ』という種類に属していると勝手に思っているけれど、本当はただの雑種なのかもしれない。自分で言うのも何だが、僕ほど賢い猫はそんなにいないと思う。鳴き声も頭も良いうえに、漆黒のツヤツヤとした毛並みと、スマートに引き締まった体。シュッとした尻尾…
小説 『高校生SM 』 【第7回】 大西 猛 先生への思いは大きく私の心を支配した。皮肉に満ちた笑顔、優しく包み込むような笑み。数分間話しただけで、いくつもの知らないあの人を見た。 「もしかして川北さんは洗礼でも受けてるの?」「いいえ、受けてません」「じゃあ、親戚とかに信者の人がいる?」「私の周りにそういう人はいません」「じゃあ、なんでキリスト教は寛容だって思うの?」「なんでって……、そう言われると答えづらいですけど、映画とかを観て、そういうイメージができたっていうか」「例えばどんな映画?」「先生が言ってた『ベン・ハー』とか『クオ・ヴァディス』とかです」「ああ、なるほどね」…