俳句・短歌 歌仙 2020.12.08 歌集「ひとり歌仙」より三首 ひとり歌仙 【第19回】 田中 靖三 “気がつけば超電導の虜なり” ――科学と日常を結びつける新しい文芸の形。 電気抵抗ゼロで世界に革新をもたらす夢の科学技術「超電導」。日々刻々と新しい技術に取って代わられる科学の世界において、人の寿命にも伍する100年以上の歴史を刻む「超電導」を、「5・7・5」の長句、「7・7」の短句を詠み重ねる歌仙方式で花鳥風月を織り交ぜ、詠いあげる。科学叡智の結晶「超電導」は、歌仙の響きと共にやさしく世界に溶けていく。 松尾芭蕉が作り上げたと言われるこの型式の、独吟による「ひとり歌仙」を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 銅被すりゃ磁束跳躍治まりぬ 思ひ出してよ冷却のこと SC線それぞれ違ふ調理法 ただ焼き芋かパイ焼く窯か 立ち上がる煙の白む月夜かな 湖や遥けし堅田の御堂
小説 『娘からの相続および愛人と息子の相続の結末[人気連載ピックアップ]』 【第10回】 川井 れもん 娘の葬儀代は1円も払わない、と宣言する元夫。それに加え、娘が生前に一生懸命貯めた命のお金を相続させろと言ってきて... 次の日から雄二と2人で、市役所に提出する書類の整理や墓に納骨をするなど、予想以上にやらなければいけない事が多かった。そのためここ数日、私は身体に激しい痛みを感じて我慢できなくなっては休憩して、回復してから行動しての繰り返しだった。それでも、なんとかやらなければならない事をすべて終了させて、やっと直美の遺産相続の手続きをする事になった。この手続きは最初から姉に依頼しており、直美名義の口座がある銀行…
小説 『刀の反り』 【第7回】 大髙 康夫 自分の腹に刺さった脇差を信じられないものでも見たような顔付きで見詰めた。「命の遣り取りに卑怯などと言うことはないわ。何をしようと勝てば良いのだ」 弥十郎は構えを上段に素早く戻すと横殴りに剣を振るった。その時である。猛之進の猛打するように打ち下ろした刀身が弥十郎の刀の棟を叩いたのだが、鍔元二、三寸のところからまるで飴細工ようにぽきりと折れたのである。弥十郎は一瞬あっと声を上げたが、直ぐに後ろに飛び下がると脇差(わきざし)を引き抜いた。それから気息を整えるように長い息を吐くと再び猛之進と対峙した。弥十郎はどことなく先ほどよりも落ち着いたように…