俳句・短歌 歌仙 2020.12.01 歌集「ひとり歌仙」より三首 ひとり歌仙 【第18回】 田中 靖三 “気がつけば超電導の虜なり” ――科学と日常を結びつける新しい文芸の形。 電気抵抗ゼロで世界に革新をもたらす夢の科学技術「超電導」。日々刻々と新しい技術に取って代わられる科学の世界において、人の寿命にも伍する100年以上の歴史を刻む「超電導」を、「5・7・5」の長句、「7・7」の短句を詠み重ねる歌仙方式で花鳥風月を織り交ぜ、詠いあげる。科学叡智の結晶「超電導」は、歌仙の響きと共にやさしく世界に溶けていく。 松尾芭蕉が作り上げたと言われるこの型式の、独吟による「ひとり歌仙」を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 老松や支え木の上の若緑 臨界値とて日進月歩 磁束流ピンの棹さし止むらん 知恵千万も2グザイの内 万緑の中を一声恥じもみで 朝の入江にひとり泳げり
小説 『恋愛配達』 【第15回】 氷満 圭一郎 配達票にサインすると、彼女は思案するように僕の顔を見つめ「じゃあ寄ってく?」と… 「本業は酒屋で、宅配便はバイトです。ところでさ」ぼくはたまらず差し挟まずにはいられない。「さっきからなんなの、どっち、どっちって?」「だってあなた、ドッチ君だもん」「何、ドッチ君て?」すると瞳子さんは、ぼくの胸に付いている名札を指差した。これは配達者が何者であるのか知らせるために、運送会社から貸与されているものだ。ぼくの名前は以前病室で宴会を開いた時に教えていたはずだが、漢字までは教えていない。…
小説 『奥会津の人魚姫』 【第18回】 西田 理酉 死んだ娘に掛かっていた6000万円の保険金…。双子の片割れにはアリバイがあった。 「確かに一応関係者の足取りを確認するのが、我々の仕事なのですが、乙音さんと千景さんはその日、会津若松市の複数店舗で買い物をしており、レシートの時刻が正午頃の物もありました。つまり、汐里さんが亡くなった時刻に、お二人がめぶき屋にいなかったのは間違いがありません。これはお店の防犯カメラの映像からも、確認済みです」「でもそこまで調べてるってことは、やっぱり警察も乙音を疑ってたってことだ」「いいえ、これ…