セットリストNo.1(第一章)
10 Forget Me Nots–Patrice Rushen
「今度、近いうちに必ず時間とって遊びに来るからさ」
翔一は本当に、そうするつもりで約束をした。
「まぁ、しょうがないか。これを待ってる人が、六本木にたくさん居るみたいだし……でもホントに、今度ゆっくり来てよ。ちょっと相談したいこともあるからさ」
新二は、そう言いながら、NULLSで連絡がついたときに翔一から頼まれたモノを、手渡した。新二が、あんまり寂しそうな顔をして言うから、言い訳じみた言い方になってしまったが
「いや、今、六本木から一緒に来た女の子で、香子っていう名前の素敵な子をロビーに待たせているんだよ、それがなけりゃ良かったんだけど」
翔一は、『こんなことを話して、喜んでくれるのも確かに、新二だけだしな』そう思い、取り敢えず言ってみた。
「ホントにー? そうなんだー。それでどうなの?」
新二は、そのくらいの言葉でしか訊かない。2人が、お互いを知ってから、20年近い時間が経っている。そしてお互いのことを、本人よりもよく知っているくらいの付き合いをしてきた。
だから、だらだらと言葉を並べて尋ねるようなことは、滅多にない。女性に対しての好みや、好きな食べ物も、だいたい知っている。二人の付き合いは、こんな感じのものだ。
「うん、この出逢いは真剣にキープしていきたいかなって、思ってるんだけどね」
翔一は、本心を何一つ隠すことなく新二に話した。今までもずっと、そうしてきたように。