継母と早苗さんの関係はよくなかった。早苗さんとの年齢は10歳も離れていないこともあってか、継母は早苗さんに冷たく当たることが多かった。

早苗さんはそのことを忘れるかのように勉強に打ち込み、部活の陸上競技に熱中していた。早苗さんの学校の成績は常に優秀であり、部活の成果も悪くなかったことから、広沢社長にとっては自慢の種でもあった。

広沢社長は早苗さんを悪く言うようなことに対しては敏感で、常に周囲に神経をとがらせている。継母もしばらくしてから表立って彼女に当たることはしなくなった、というよりもできなくなったと言ってよいだろう。だからといって、2人の関係がよくなったわけではない。

そのような中でも、早苗さんは素直でやさしい性格に育ち、周囲に対しても気配りを欠かせない人になっていった。それはクラスの仲間に対しても、地元の技能実習生に対しても同様だった。彼女は多くの人々に慕われる存在である。

これも吉岡の前任で広沢社長の会社を担当していたB監理団体の職員から聞いた話だが、広沢社長の後妻は、実は外国人技能実習生の受け入れを喜んでいるわけではなかった。何かアジア系の外国人に対して偏見があるらしい。

噂によると、風俗で働いていた時代にアジア系の外国人からいやがらせを受けたり、ストーカーまがいのことをされたとのことである。そのため、後妻は広沢社長には技能実習生についてはたびたび否定的なことを言っていた。

「あなた、ガイジンなんか雇ってなんのメリットがあるの? 言葉もわからないし、ちゃんと働いているのかわからないじゃないの?」

「いや、彼等は一生懸命働いているよ。彼等のおかげで会社は大きくなったわけだから」