そして、それを「J」も傍で聞いていた。
「J」はうつむいたまま、こちらを見ようともしなかった。
「J」はそれ以来、その動物病院へ行くのを嫌がるようになった。
言葉がわかっていたからだ。
「J」のいる前で、言って欲しくなかった。
犬だって、言葉がわかるのに!
その後、仕方なく数回通ったが、それ以降、もう二度とそこへ行くことはなかった。
土地を売りに出す
その当時、私にはお金がなかった。
軽井沢の土地や貸別荘建築にほとんどのお金をつぎ込んでいたからだった。
しかし、そんなことは言っていられなかった。
私は何としても「J」を助けたかった。
たとえ治療費がいくらかかっても。
「そうだ!」
「あの土地を売りに出そう」
貸別荘が作れないということで放置していた南軽井沢の土地を売りに出そうと思った。
あの土地を売れば、どんなに高額な治療費がかかっても多分大丈夫だ。
どうせ、もう必要ない土地だ。
「J」の命が助かるなら、何でもしようと思った。
地獄のような日々
余命宣告を受けてから、「J」の体調はどんどん悪くなっていった。
「血管肉腫」という病気は、脾臓に出来た腫瘍が破裂し全身に転移するという、最悪の癌だった。
手術したとしてもあっという間に転移するため、90%が1年以内に死んでしまうという最悪の癌らしい。
でも私は諦めていなかった。
「絶対に奇跡は起きる!」
根拠のない自信があった。
「J」が簡単に死ぬわけない!と。
だって、「J」からもらった幸せを他の子たちにも分けてあげたいとアニマルチャリティ活動もやっているじゃない。
神様がいたら、助けてくれるはず。
そう信じたかった。
試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。
【イチオシ記事】2度目のキスは、あの夜よりも深かった…体の隅々まで優しく触れられて、声が漏れてしまった。体中に電流が走るような感覚がして…