【前回記事を読む】月に3回、同僚とホテルへ行く習慣ができた。職場の飲み会の帰りにそういう流れになって、恋人はいたけど止められなかった。
「火点し時」
さすがにみどりを抱いた日は静子のアパートに泊まる気にはならないので我が家に帰る。あまり帰りたくないのだが。かと言って一人暮らしは面倒だし、どうせなら静子と同棲した方が何かといいのだけど、静子のアパートは二人で住むには狭いし、もう少し待ってからちゃんと結婚という形を取ろうと考えていた。まあ先の話だし、焦ることはない。
「ただいま……」
リビングでは両親がテレビを観ている。優人を見た母が嬉しそうに立ち上がった。
「お帰り優人、何か食べる?」
「いやいいよ。すぐ風呂入る。兄貴は?」
「今日は出張でいないわよ。優人、昨日また静子さんちにいたの?」
「そうだけど?」
「そう……昨日正人がね、結婚したい人がいるって言ったのよ。ビール冷えてるわよ」
「へえ? 兄貴が結婚?」
優人は冷蔵庫から缶ビールを取り出した。母もダイニングに来て話し続けた。
「それが転勤なんだって。大阪よ。一緒に行くからって。最低でも三年ですって。ちょっと急なのよね」
「へー……。同じ職場の人?」
「そうだ、で、日曜お前仕事か?」
リビングから父が聞いた。
「うん、日曜は基本的に休めないって、知ってるだろ。うち来るの?」
「そうなのよ、お昼にね。じゃあ無理かしら」
「無理だね俺は……。まあその内会うでしょ。良かったじゃん、おめでたいね。じゃあ風呂入るよ」
「優人は静子さんとどうする気なんだ?」
優人はビールを飲み切ると、父を見た。珍しい質問だが、正人が結婚するなら聞かれてもおかしくはないか。普段あまり話さないのだが。
「ちゃんと考えてるよ。でもまだ俺ら二十五だからね、後四年ってとこかな」