「地球最強の生物」と呼ばれるクマムシという微生物は、休眠状態になると何十年と冷凍保存されようが生き延びるらしい。その呼び名は地球上全ての生物と比較して最も強いという表現である。それはどんな環境でも生き抜く生命力の強さが最も強いゆえに、〝最強〟だと称されたのである。
「最強の消防設備士」という定義においては、消防設備士に問われているのが〝誠実さ〟である以上、その強さとは〝誠実性の強さ〟ということであろう。誠実性の強さを示すとするならば、〝信念〟という言葉が近い表現かもしれない。誠実な業務を貫く信念。悪を悪と断じる信念。権力に屈しない信念。これを私は〝消防設備士の強さ〟の定義と考えたい。
そしてその強さが最も強いことを示す〝最強〟という言葉は、前述した吉田選手やクマムシのように、大抵の場合、他者との強さの比較のために使われるものである。そうなると「最強の消防設備士」とは、消防設備士として従事する人の中で最も信念の強い人を指すように捉えられるだろう。
果たして消防設備士の信念の強さが、他者と比較して1番である必要があるのかどうか。その強さは〝2位じゃダメ〟なのか。
ただ、〝信念〟が求められる仕事である以上、そこに2位でもいいという妥協はそもそもあり得ないだろう。信念の強さを他者と比較することは難しいが、それ自体が他者よりも弱くていいという理屈にはならないのである。
とはいえ、「最強の消防設備士」を提唱して、他の誰よりも信念を強く持つことを勧めているわけでもない。他者とその信念の強さを比べる術はないのだからそれも当然でもある。私が今回示したい「最強の消防設備士」とは、他者との比較による優劣を問うのではなく、自分自身の中で過去の自分の信念と比較した場合における最強の意なのである。
つまり私が示したい「最強の消防設備士」とは、「〝自分史上最強〟の信念に生き抜く消防設備士」である。
人は他者との比較に生きる時、嫉妬や憎しみ、諦めや傲慢の呪縛に囚われ、本来目指すべき〝誠実性の極み〟の境地に至る道は崩れ去るだろう。だからこそ〝自身の中での最強という境地〟を目指してほしいのである。自身における最も強い信念の行動を引き出す人。
体裁や権力など信念を覆す外的要因に屈しない人。その人を私は「最強の消防設備士」と定義する。
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