第2章 最強の消防設備士への道
最強の消防設備士とは?
「2位じゃダメなんですか」
2009年、政権交代した民主党によって実施された〝事業仕分け〟。自民党政権下での予算の無駄を洗い出す中で、世界一を目指していたスーパーコンピューター(スパコン)の開発計画に対して、蓮舫議員が放った言葉だ。何のために1位を目指すのか。
確かに一理あるようにも思えるが、開発に携わる側からすれば愚問であるのかもしれない。この言葉に対しては賛否両論、様々な捉え方があると思う。
私が示そうとしている「最強の消防設備士」も然りだ。
「最強の消防設備士って何が一番強いってことですか」「最強を目指す意味は何ですか」そのような疑問に対し、何をもって最強と定義し、なぜ最強を目指すのか。明確に示す必要があるだろう。さて、その最強について意義付けをする前段として、まずは〝消防設備士のあり方〟、〝消防設備士のあるべき姿〟とは何なのかを確認したい。
消防法第17条の12には次のように規定されている。
消防設備士は、その業務を誠実に行い、工事整備対象設備等の質の向上に努めなければならない。
この一文は消防設備士たる者の基本姿勢を問う重要な規定である。消防設備士に〝誠実さ〟と〝向上心〟を明確に求めたものだ。この一文を踏まえれば、〝点検料金が安いことを理由に点検しない者〟も〝自分たちの点検クオリティの低さを省みない者〟も、もはや消防設備士とは言えないのである。
ただ、消防設備士に問われる〝誠実さ〟や〝向上心〟とは、明確な数値化ができない抽象的な目標とも言えるだろう。ゴールのない仕事と言えば確かにそうなのだが、明確な数値化ができない目標は総じて具体的な目標にもなり得ない場合が多い。では、そんな抽象的なゴールに対して、一体何を〝目指すべき最強〟という位置付けができるだろうか。
まず〝最強〟を決める上では、消防設備士が一体何の強さを求めるものなのかを明確にする必要がある。
「霊長類最強女子」と呼ばれたレスリング55キロ級の吉田沙保里選手。この呼び名は彼女の圧倒的な強さを表したもので、霊長類の中で本当に比較した結果ではないが、当時のレスリング界での他者との比較によるものであることは間違いない。レスリングという分野における強さが最も強いゆえに、〝最強〟の称号を得るに至ったわけだ。