第1章 思いもよらない事態

その2 病院で楽しく過ごすために
─何でも楽しいと思えば楽しくなる─

病名が判明した翌日の7月30日から、抗がん剤の投薬治療が始まりました。

私はその前の日の夜から、スマホで「白血病」や「急性リンパ性白血病」についていろいろと調べました。ネットの情報によると「白血病は見つけにくい病気であり、初診から3日目で病名を確定できたのは早いほう」だそうで、早期発見と早期の治療開始ができたのは不幸中の幸いらしいということもわかりました。ほかの人のブログを見ると、いくつもの病院を「たらい回し」のように回ったという話がありました。

京大病院の血液内科は近年新設された積貞棟という病棟の3階にあり、この階の全体が「無菌室」のようなつくりになっています。

エレベーターを降りてすぐの病棟の入り口には自動扉があって、この扉で外側の空気と内側の空気を完全に分けられるようになっているのです。

病棟に入るにはインターホンで名前を確認してからになっていて、入ってすぐのところに前室があります。そこで手を洗ってから、もう一つの自動扉を開けて入ることができるようになっています。

コートや荷物は病棟入り口の横にあるロッカー室に置くようになっていて、入室にはマスク着用が義務付けられています。また、扉で区切られている手を洗う場所にはエアーカーテンのようなものがあって、服などについたホコリなどが落ちるようになっていたり、病棟内の気圧が高くなっているので病棟内から入り口側へわずかな風が吹いていて、ホコリやウイルスなどが病棟内に入るのを防いでいます。

さらに、血液内科のそれぞれの病室には天井にエアコンが埋め込まれており、その吐き出し口には大型のフィルターがつけられていて、ホコリや菌類などが飛ばないようになっています。

このような設備があるので、昔の映画やドラマにあったようなベッドの周りを透明なビニールのカーテンで囲うようなことはしなくても十分な「無菌状態」を保った病室となっています(とても新しくてきれいな病室でした)。

私は、白血病というと真っ先に『世界の中心で、愛を叫ぶ』という映画を思い出してしまうので、「こんなに普通の病室に見える場所で大丈夫なのか」と心配になりましたが、最新の設備で十分に無菌状態を確保しているとの説明があり、とりあえず安心しました。

万全の設備で守られているとはいえ、それでも病室には生きているもの(生花や植木鉢、動物など)や表面積の大きいもの(ぬいぐるみや折り鶴)などは持ち込むことが禁止されています。いずれも菌の持ち込みや繁殖が起こりやすいからです。

その他のもの、例えばパソコンやノート、飲み物、簡単な食料品は持ち込み可能で、自分に必要なものをそろえて快適な入院生活の準備をすることが大切だと思いました。そこで、夏休み中の妻に頼んで快適な病院生活を過ごすためのグッズをそろえることにしました。