その潜在力を活かし、国内外の支援制度や投資の流れを組み合わせ、研究者・企業・投資家・規制当局・患者が連携する創薬エコシステムを構築していくことこそ、日本発の創薬イノベーションを実現する道筋となるのです。

日本は薬を生み出せる国です。まだまだ治せない病気はたくさんありますが、その一つひとつに挑み、新しい治療法を届けることが未来の社会を変えていきます。創薬ベンチャーの挑戦は、日本の成長戦略そのものであり、世界に誇れる力をさらに発揮していくための原動力なのです。

そして――冒頭の研究者A氏の問いかけ、「この発見を薬にするにはどうすればよいのか?」は、いまや日本の社会全体に投げかけられている課題でもあります。死の谷を越え、100億円の壁を突破する道筋を築けるかどうか。

その答えを示すのは、研究者一人ではなく、産学官すべてが連携して創り出す未来なのです。その未来を現実に変えるために、整えるべきは「資金・制度・人材」の三位一体です。すなわち、シーズをPoCへ運ぶ橋渡し資金を厚くし、

PMDAとの対話を開発初期から「定例化」し、CMC・臨床・知財・市場アクセスを束ねる実務体制(RA/CMC/Clin/BD/MA)を早期に核として据える―そのうえで、IPO/M&A/ライセンスを組み合わせた複線的な資本戦略と、患者・医療現場の声を起点にした適応症設計を行うこと。明日から踏み出せる一歩は小さくても具体的です。

①PoC仮説と必要データ・時期を 1枚の見取り図にする、②規制相談の年間計画をカレンダーに固定する、③ 不足している機能(RAリード、臨床PL、CMCリード等)を指名し、外部CRO/CDMOやKOLと連携網を敷く。

――この三手を起点に、研究者・起業家・行政・投資家・患者が同じ地図を共有したとき、日本発の創薬は「壁」を道に変え始めます。

では、こうした現状を踏まえたうえで、次章では「創薬ベンチャーはいかにして立ち上がるのか」、すなわち研究者の情熱や技術シーズがどのようにして事業の芽へと変わっていくのかを探っていきます。起業家精神、仲間づくり、そして最初の資金調達――ベンチャーの始まりにある葛藤と可能性を追っていきましょう。


[1] 東京証券取引所.グロース市場における上場基準見直しについて;2023.Available at:https://www.jpx.co.jp/(最終アクセス:2025-08-31).

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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