特に創薬や再生医療といったバイオ、あるいはディープテック領域のスタートアップにとって、この「100億円の壁」は厳しい現実として立ちはだかります1。研究開発の期間が長く、短期間で安定した売上や利益を示すのが難しいためです。その結果、IPO後も株価が伸び悩み、時価総額が100 億円に届かないケースが少なくありません。

こうした状況の中で、出口戦略も変化しています。

・早期ライセンスアウトや共同研究―研究資金を確保しつつリスクを分散できるが、大きなリターンは望みにくい。

・M&Aによる開発継続―大手の資金やインフラを活用できる一方、独立性を失う可能性がある。

・スイングバイIPO―短期間で上場し、その後にM&Aや再投資を狙う戦略、すなわち、いったん大手傘下に入り、体制を整えたうえで再上場を狙う戦略を指す。市場の信頼は得やすいが、資本構造や利害調整が難題となる。

では、この壁を越えるには何が必要なのでしょうか。単なる資金調達テクニックを超えた、総合的な戦略が求められます。

・二段構えの出口計画―研究初期はライセンスや共同研究で資金を確保しつつ、成長段階ではIPOやスイングバイIPOを柔軟に選択する。

・中期資金の厚みづけ―AMEDやNEDOなどの非希薄化資金と、海外VC や事業会社CVCを組み合わせ、臨床中期で資金切れを起こさない。

・投資家への「翻訳」―技術の独自性ではなく、「誰の課題をどう解決するのか」「どの市場で収益化できるのか」を明快に語る。

・臨床主導力の確立―治験ネットワークやKOL(Key Opinion Leader)との連携を強化し、国際共同治験でも主導権を握れる体制を作る。

日本のIPO市場は確実に「選別の時代」に入りました。単に「上場できるかどうか」ではなく、「上場した後、5年で100億円を超えられるか」が問われます。

こうして見てくると、日本の創薬ベンチャーが抱える課題は少なくありません。しかし同時に、研究シーズの質の高さやiPS細胞に代表される基盤技術の強さといった、大きな強みも確かに存在します。