第二章 田舎育ちの映画少年
自然と手仕事に育まれた幼少期
子どもの頃に「夢中になったもの」は何ですか? テレビゲームやスポーツ、アニメキャラクターの絵を描くこと―いろいろあるでしょう。内気で話すことが苦手な私でしたが、いろいろなことに没頭した少年時代を過ごしました。その楽しい時間が、のちにハリウッドで特殊造形アーティストとして働く自分を作ることになるとは、そのときは想像もしていませんでした。
私が育ったのは、長野県飯田市という「りんご並木と人形劇の町」として知られる自然豊かな場所です。四季折々の風景に囲まれたこの町で、私は幼少期を過ごしました。
特に大好きだった夏休みは、昆虫採集や川遊びが日課でした。森でカブトムシやクワガタを探し、川や田んぼではザリガニやカエルを捕まえてきて飼育ケースに入れて、じっくり観察していました。奇妙な形や独特な動きをする生き物たちに強く惹かれ、何時間でも飽きずに眺めていました。この頃から、面白い形をしたものを見つける習慣が身についていたのです。
私の祖父は和菓子職人で、商店街にある3階建ての実家の1階は和菓子店とその作業場になっていました。毎朝、あんこを練る回転機から立ちのぼる湯気と、強い甘い匂いに包まれた玄関を通り、工房では手慣れた動きで繊細な細工を施す無口な祖父の姿を見て育ちました。
「練り切り」という白あんを使って作る、季節の花をかたどった和菓子を一つひとつ丁寧に素早く仕上げる祖父の、形への強いこだわりとそれを作るスピードに子どもながら感動し、それを真似て紙粘土で動物や昆虫を作るようになりました。祖父のように、手を使って何かを生み出す楽しさを知ったのは、この日々の体験がきっかけです。
また、小学生の頃は、近所の動物園が主催する絵画コンクールによく一人で参加していました。朝早くに、画材を入れたリュックサックを背負って歩いて動物園に向かい、ニホンザルやペンギン、イノシシなどの動物の檻の前に小さなピクニックシートを広げ、水彩絵の具を手に、強い日差しの中で夢中になって絵を描いていました。
汗だくになりながら、動物の毛の質感や皮膚のシワ、鳥の羽の色のグラデーション――そうした細部まで自分なりにリアルに描くことに没頭しました。この体験が、観察する楽しさと、表現する喜びを教えてくれたのだと思います。
長野の自然で育まれた観察力、祖父から学んだ手仕事の楽しさ、アートを通じて得た創造力―これらが、私の「ものづくり」への情熱の土台になりました。当時はそれがどんな未来につながるのかなんて考えていませんでしたが、この幼少期の体験こそが、今の私の人生の基盤になっています。
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