図1-1に、創薬から製薬までの道筋を示しました。研究成果がどのように社会に届くのか、直感的に理解できるように整理しています。
こうした状況の中で、未来の医療を切り拓く存在として注目を集めているのが「創薬ベンチャー」です。創薬ベンチャーとは、新しい医薬品候補や技術プラットフォームを武器に挑戦する小規模企業群を指します。
大学や公的研究機関の成果を起点とするケースが多く、大手製薬企業が敬遠しがちなハイリスク領域に果敢に挑戦します。小回りの利く柔軟な発想とスピード感を持ち、医療イノベーションの「震源地」としての役割を果たしているのです。
創薬ベンチャーに寄せられる期待は大きく、第一に挙げられるのは大手企業が踏み込みにくい分野に挑戦できることです。希少疾患や小児疾患、再生医療や核酸医薬といった新しい領域は、研究段階の不確実性が高く、失敗すれば莫大な損失を招きます。
そのため、規模の大きな製薬企業ほどリスクを避ける傾向が強くなります。けれども、小規模で機動力のあるベンチャーなら、果敢にその一歩を踏み出せるのです。研究者の独創的なアイデアがそのまま事業の原動力となり、イノベーションを加速させることができます。
もう一つの重要な役割は、大学や研究機関の知を社会に還元する橋渡し役であることです。研究室で発見された技術や分子は、そのままでは患者に届きません。創薬ベンチャーはそれを事業の形に整え、投資を呼び込み、薬事規制の壁を越え、臨床試験に進めるための推進力となります。言い換えれば、学術の成果を「薬」に変える変換装置のような存在です。
