【前回の記事を読む】嫌な予感がする…地下アイドルの彼女からの着信に折り返すも応答なし…いつも携帯を手放さないはずなのに何故?
第一章 〜それぞれの夜、それぞれの真実~
01 2009年 渋谷 友美の失踪
母親では話にならないと判断した隆弘は、親友の涼介に連絡を取る。メールを送り、すぐに電話する。だが涼介も反応がない。いやな沈黙が部屋の空気を粘着質なゼリーに変える。
「……何だよ、どこ行ったんだ」
苛立ちと不安がないまぜになる。彼は思い立ってmixiを開く。まだフェイスブックもインスタも成熟していない時代、mixiは若者のコミュニケーションの場である。友美のプロフィールページを覗くと、数時間前にログインした形跡がある。
更新はない。だが少なくとも、数時間前までは生きていた。その安堵が胸をかすめるが、同時にそれ以上の情報が得られず苛立つ。記憶にこびり付く友美の笑顔、あの透き通った声。どこへ行った? なぜ折り返さない?
翌日、渋谷のスクランブル交差点。大型ビジョンがJ-POPの最新ミュージックビデオを繰り返し流し、タワーレコードのイエローの看板が存在感を放っている。
交差点の一角では路上ライブが開かれ、行き交う人々の足を止める。週末ともなれば、雑踏の中で若者たちがスナップ写真を撮り合い、最新のファッションを競い合う活気が溢れている。
109にはギャルブランドが勢揃いし、ルーズソックスこそ減っているものの、緩巻きヘアや盛り髪、濃い目のつけまつげが渋谷の女子高生たちを鮮やかに彩っている。渋谷のカルチャーは勢いを失わず、ファッション誌『EGG』や『JELLY』、読モ文化がまさに全盛期を迎えている。
季節外れの雪がちらつく十二月。
湿った冷気がコートの隙間から忍び込み、肌を刺す。クリスマス前のイルミネーションが画面のように街を染め、EXILEの『I Believe』がビルのスピーカーから微かに流れ、年末に向けて浮き足だったムードが漂う。それでも隆弘の心は重苦しく、彼はコートのポケットに手を突っ込み、眉間に皺を寄せて歩く。
すぐ隣にいるのは涼介。中学時代からの親友で、どちらかといえば陽気なタイプだ。身長は隆弘より少し高く、すっきりとした顔立ちに短めのヘアスタイルが似合っている。
ファッションはストリート系でまとめたカジュアルな装いで、ワックスで立ち上げたショートヘアと薄手のパーカーの上にダウンジャケットを羽織っている。
涼介はいつもなら軽口を叩くが、今は隆弘の様子を気遣うように黙っている。「どうした、そんなに悩んで?」と尋ねたそうな雰囲気だが、踏み込み過ぎない距離感が二人の友情を物語っている。
隆弘は涼介より少し背が低いが、細身のジーンズとネイビーのコートを身にまとい、黒いブーツで固めている。
髪は黒髪ショート、前髪が少し目にかかる程度。顔立ちは整っているが派手さはない。むしろ、静かな観察者のような雰囲気をまとっている。