【前回の記事を読む】人生初デートの日、彼女の祖父が車で迎えに来ることに…待ち合わせは校門で、ジャケットを着て待っていると…
第五章「居場所」
五分ほどたって、僕の前に白い軽自動車が停まり、助手席のフロントガラスが開く。
「おはよう、黒田くん。ごめんね、待った?」
「おはよう。いや、今来たところ」
つい漫画のセリフみたいな返事をする。車を降りた彼女は後部座席のドアを開けて、奥の方に座り直す。
「黒田くんも乗って」
「あ、初めまして。黒田透です。今日はありがとうございます」
「いやいや、いいんだよ。雫が心配だったし、ちょうど出かけようと思ってたからね」
運転席にいる雪野さんのおじいちゃんに簡単に挨拶をする。七十歳くらいだろうか、白髪交じりだがカラフルなチェックのシャツに黒いダウンをおしゃれに着こなした、とても人のよさそうなおじいちゃんだ。
クシャっとしわを寄せて笑顔で手招きされ、僕も雪野さんの隣の後部座席に座る。怖そうな人だったらどうしようと思っていたが、考えすぎだったようだ。
「雫から黒田くんのことはよく聞いているよ」
「え? なんて聞いたんですか?」
「ちょっと、おじいちゃん。恥ずかしいからあんまり言わないで」
ほんのりと頬を赤らめてそう言う彼女は、学校にいるときよりも気が緩んだ口調でちょっと新鮮だ。それに私服姿を見るのも初めてかもしれない。
足首近くまである白いレースのワンピースが彼女の長い黒髪とすごく似合っている。隼人がいつも騒いでいたから僕が言う機会はなかったけど、改めて可愛いなと実感する。
「黒田くん、いつも雫と仲よくしてくれてありがとうね。中学校の卒業前、雫はもう学校には行かないって言っていたんだけどね、黒田くんのおかげで卒業式に出られたんだよ。それに高校生になってからもよく一緒にいてくれているんだってね。いやー、想像していた通りの好青年だよ」
「いえ……そんな」
「いつも雫に勉強を教えてくれたり、クラスの仕事も手伝ってくれたりしているんだって?」
「いや、それは雪野さんの方ですよ」
「雫は優しすぎるからちょっと心配でね、黒田くんみたいなしっかりした子がそばにいてくれて安心しているよ」
雪野さんが家で僕のことを話してくれているという事実と、まっすぐな言葉で褒められたことにすごく照れてしまう。でも、ちらっと隣に目をやると、僕よりも雪野さんの方が照れて先ほどよりも顔を真っ赤にしていて、なんだかその様子がおかしくて笑ってしまう。
「もう! 黒田くん、どうして笑うの」
「いや、なんか嬉しくて」