葛の葉が声をかけると、うとうとしていたおぼちゃんが目を開けた。
おぼちゃんは、ずっと晴明様のために働いてきた。
平安時代の牛車の牛の代わりに、人間の顔がついた籠で仕事がない時はうつらうつら眠っている。
最初は髭ぼうぼうだったのが、葛の葉が暑苦しいと言って髭をそり、眉を整え髪型も韓流アイドルのように変え、小さなピアスまでしてすっかり今風になっている。
「ここまで乗せてってほしいんだけど」
と言うと、
「いいよ」
と、こころよく笑って言ってくれた。
二人はさっそく乗り込んで、おぼちゃんは高く飛び上がる。
飛んでいるうちに湖を超えると、
「あ、ここだわ」
朱雀には森しか見えない。
「ええ? ほんとに?」
「だって時計が止まったもの」
下を見ると茶色のがれきのようなものが見えた。
二人は急降下して荒れ果てた廃墟のような場所に降りる。
おぼちゃんに涼しい森の中で待っていてもらい、
「ひどいな」
朱雀がつぶやき、二人は建物の中に入る。
「何なんだここ、ものすごく古い霊が通るな」
「おまえにも見えるか、ここは下と繋がってしまってな。それを見た人間が絵にしたのよ。それが想像力とか発想力だといって賛美されてね」
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