2013.4 出会い

さかのぼること一年前、僕らの出会いは、ある休日の昼下がりのことだった。僕は大宮駅付近の、とある路地裏に座り込み、携帯アプリで遊んでいた……すると数十メートル先に、一人の女の子が佇んで、じっとこちらを見つめている。

それに気付き、ふと目を向けると彼女はホッソリした華奢な体で、透き通るような白い肌、艶やかで美しい黒髪に、白いウエスタンブーツと淡い水色のレース素材のワンピースを着ていた。

僕は、美し過ぎる彼女の容姿に目を奪われた……だが彼女は、何かに怯えているかのようだった……僕は、そんな彼女の心情など気にも留めず「君もこっちに来れば?」と何気なく声をかけた。

すると彼女は「……うん……」とゆっくりと頷いた(少し気難しそうな娘だな……)。そう思いながらも「君もゲームやるの? それともこんな所に、座り込んでゲームやってる俺を見て、変わった奴って……心の中で笑ってたかな?」と笑って話しかけると彼女はクスっと軽く笑みを浮かべた。そうして少しずつ、距離を縮めていく……。

僕は、彼女の鞄に入っている物が気になり遠目で鞄を覗き込むとそこには、ある薬が入っていた……それに気付いた彼女は「何見てるのっ」と強い口調を発しながら、鞄の中を隠す。

「あっ、ごめん……つい」

動揺しながら僕がそう返すと彼女は、少し重たい表情で呟いた。

「私……病気なんだ……」

僕は、返す言葉が見つからず「そうなんだ……」と言いながら俯く……しばらく沈黙が続き、やがて彼女は時間を気にしだし、腕時計を見る。

「もうこんな時間か……そろそろ帰らなきゃ」とポツリと呟きながら立ち上がった。

僕は、彼女を見上げ「あっうん……それじゃ……」と、彼女を見送る。去り際に、彼女は振り返って言った。

「また会ってくれますか?」

「あぁ……勿論」

僕は笑顔で返す。

すると彼女もまた、ニコっと微笑みその場を後にした。僕の何が、彼女に「また会いたい」と思わせたのだろう。でも、僕もまた、彼女に「また会いたい」と思っていた。この時、彼女の鞄に入っていた薬が、僕の脳裏をよぎった。それは、精神科で処方される薬だった……。