長野へ

付き合い始めて四年が経ったある日、私は本を読み信州に行ってみたいと照将さんに話したところ、行ってみようということになり、旅が実現しました。

高山植物に詳しい照将さんに植物について教えてもらえること、そして関東では見ることのできない山並みやそこに生息する植物を探索しながら、無言館の絵画を鑑賞できると思うと、出発の日が待ち遠しく感じました。

無言館には、第二次世界大戦で亡くなった画学生が、戦地に赴く前に大切な女性や家族などを思い出として描き、遺していった作品が展示されています。ひとり一人の作品に物語があり、絵の前に立つと、心が締め付けられました。館内はほの暗く、静寂の中に遺された絵が浮かびあがり、私は立ちすくんでしまいました。館内に入った時の張り詰めた空気、そして空気の冷たさを今も覚えています。

植物に詳しい照将さんは、初めて目にする私に、一つずつ名前を教えてくれました。これまで目にしたことのない可憐な花に、思わず笑みがこぼれたことを思い出します。時間がゆっくり流れていました。

初夏の信州の景色と澄み渡った空の青さ、照将さんの満面の笑みが心に残っています。

昼間は一緒に景色を眺めたり写真を撮ったりして楽しみ、夜は愛を確かめ合うため、熱い口づけと抱擁をして眠りました。あの時の肌のぬくもりは、今も忘れられない思い出です。