妻の典子は、趣味の社交ダンスの衣装(丸井泰三も好きだったピンクのドレスに、誕生日に買ってあげた真珠のネックレス、結婚記念日に贈ったダイヤモンドの指輪等々)を着用していた。

そして、その傍らには丸井泰三の友人の中では一番若い青年、妻の社交ダンスの講師及びパートナーでもある河合隆行が、こちらも青いラメ入りの社交ダンスの衣装で他の参列者と談笑していた。

娘の佳代子は大胆な黄色のビキニ姿に、首から赤い花飾りを下げていた。まるでリオのカーニバルを連想させるような身なりで、弟の宏となにやら話をしていた。

その宏といえば、ルパン三世のつもりか、赤いジャケット姿でこの葬式に参加していたが、他の参列者と比べてみると、地味と言わざるを得ない格好だった。今回の葬式のやり方に、最後まで反対していた宏にとっては一種の抵抗のつもりだった。

もうひとりの友人、田中松男は上下金ピカの衣装を着け、参列者の中ではひと際目立っていた。彼は、丸井泰三の会社が倒産寸前まで追い込まれたときに、資金を投資してくれた、ある意味、命の恩人だった。こちらは逆に、故人の遺志は尊重すべきだと最初から主張し、家族を説得した人物でもあった。

丸井泰三の元部下で、泰三引退後の現在、会社の役員に就いている長谷川篤、三浦芳樹、渡辺貞之の三名は、前もって連絡を取り合ったうえで、自分たちが結婚式の披露宴で着用した服装、それぞれ紫、緑、紅白のボーダーといった出で立ちでやってきた。

葬儀場には、丸井泰三が生前お気に入りだったフランク・シナトラの『マイ・ウェイ』や『フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン』などのヒット曲が流れ、シナリオどおりの明るい雰囲気を醸し出していた。

故人を偲びながらも、参列者ひとりも涙一粒こぼすことのない、笑顔に満ちた葬式。それを丸井泰三は天の上から、こちらも笑顔を浮かべて見守っていた。

妻の典子と河合隆行が社交ダンスを披露することとなり、会場は拍手喝采となった。ライトアップされた中を会場いっぱい利用して踊る二人のダンスは、長年のパートナーであることを見せつけるがごとく息もぴたりと合っていて、社交ダンスに興味のなかったまわりの人たちをも感動させるに充分だった。

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夫の葬式に、ピンクのドレスで参列した。それは故人の希望だった。最初はお小遣い、次第に愛人契約を結んだ若いダンス講師とやっと●●できる…

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