やがてそこを抜けると、厚木中央公園と大きな交差点が見える。その交差点まで行って渡る際、歩行者用の信号機は青の時間が短く、青になってすぐ渡りだしたのに、渡りきる前に点滅し始めた。みんな小走りで渡りきる。

その先は一気に商店が減り、閑静(かんせい)な住宅街に入る。さらに進み、二つ目の交差点を渡ると歩道が狭(せま)くなった。後ろから来る自転車や歩行者に気をつけながら通る。地図によれば、美咲の家はもうすぐだ。

目の前の橋の下には川が流れている。

「川を渡ったら、今度は川沿いを歩いてきてね」

と美咲が言っていたのを思い出す。言われた通りに行くと、レンガ風の壁の家が見えた。

表札を見て、ここが美咲の家であることを確認してから、かなえは、インターホンを鳴らした。

「こんにちは。松井ですが」

ドアが開き、中に入るよう促される。

「いらっしゃい。待っていたよ。ほら巧(たくみ)も、おねえさんに、ごあいさつして」

「こんにちは」

居間に通されると、ご主人もいて、紅茶と焼菓子が出され、巧くんの性格や好きなものを説明された。その間、巧くんはアニメを見ていたのだったが、大人同士の話が終わったとみるやいなや、さっそく声をかけてきた。

「おねえさん、仮面ライダーごっこしよう」

巧くんが仮面ライダーを好きなことは、子守を頼まれる以前から美咲が話していたので知っていた。それで一応、準備はしてきていたが、いきなりそれを求められて少し戸惑(とまど)った。

やがて美咲たち夫婦が出かける時間になり、家を出る。

「巧をよろしくね」

「いってらっしゃい」

「パパ、ママ、いってらっしゃい」

それからお昼ご飯を一緒に食べて、家の近くを散歩した。そうするうち、巧くんとはすっかり打ち解け、朝の不安はいつの間にかなくなっていた。むしろ、楽しいとさえ感じていた。

かなえは、ふと、スイミングスクールで、子どもたちに水泳を教えている友人のことを思い出して、うらやましく思った。

次回更新は2月5日(木)、21時の予定です。

 

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