【前回の記事を読む】「ほかに好きな人ができた。別れてほしい」5年付き合ってきた彼氏に、突然別れを告げられた。結婚の約束もしていたのに…
化粧の魔法
年が明け、二〇一一年。美羽の携帯電話に櫻井からメールが届く。
〈明けましておめでとう。同窓会は楽しかったね。機会があったらまた会おう〉
美羽は返信した。
〈明けましておめでとう。公務員試験受かるといいね。よい一年になりますように〉
その年の三月、東日本大震災があった。東京でも、帰宅困難者が何万人もでたと聞いた。美羽は大阪にいて、あまりわからなかったが、
〈大丈夫?〉
と櫻井からメール。
自分のほうが大変なのに、それでも相手を気遣う彼の優しさを感じた。
〈大阪にいるから大丈夫だよ〉
と返信。
苦手だったはずなのに、自分でも、自分の気持ちの変化が不思議だった。そして、この震災の翌月に、横浜のみなとみらいで会う約束をした。
*
子どもの頃から劣等感が強かった美羽を変えてくれたのは、化粧品との出会いだった。今朝のメイクも完璧(かんぺき)だ。鏡に映る大人のルージュが美羽にささやいている。
「一番好きな人と結ばれるのよ」と。
繋がり
二〇一七年九月中旬、里紗(りさ)は雨が降る中、伊豆高原駅に立っていた。
あれから三年―。かなえが去っていった直後に新しい恋が芽生え、その恋が実って、二〇一五年九月に中野真一という男性と結婚した。里紗にとって真一は、自分をつくることなく自然体でいられる存在だった。
以来、悩みといえば、増え続ける体重。結婚式を挙げてから、間もなく二年が経とうという、この夏の時点で、もう六キロ太ってしまっていた。危機感を覚えた里紗は、八月も二十日を過ぎた頃に、インターネットで二泊三日の〈断食(だんじき)ヨガ合宿〉というのを見つけ、すぐに申し込んだという次第。