ところが、天井窓のあるラウンジにときどき鉢を移して、日中に太陽の光を浴びさせると、つぼみは花開くことがわかりました。

当時、院内の照明は一般的なLED(白色光)にしていました。LEDの光だと、胡蝶蘭はつぼみのまま、萎れて落ちてしまうのです。

LEDは照明代が安いため、世の中の蛍光灯は、ここ15年くらいの間に、LED照明にすっかり入れ替わりました。LED照明は、電気代が安く、一見すると明るく見えるので、良いことづくめのように思えます。

しかし、一般的に用いられている白色のLED照明の光は、波長域が狭く、胡蝶蘭のつぼみが開花するのに必要な日光に含まれる光の波長がありません(赤色の成分が必要です)。このため、胡蝶蘭の棚の照明を、日光のスペクトルと同じ幅広い波長(フルスペクトル光)が出るものに切り替えました。

それ以降、胡蝶蘭のつぼみは、つぼみのまま萎れることなく、しっかり開花するようになりました。これは、自然(この場合は日光)から切り離されると、植物の生命力が十分発揮できなくなる1つの例です。もちろん、人間も同様です。

自然とのつながりの重要性を認識させられる大きな出来事もありました。2019年末に発生したCOVID-19は、あっという間に、世界中に広がっていき、パンデミックとなりました。世界保健機関(WHO)やほかの研究機関によると、2024年までのCOVID-19による超過死亡は1,820万人と推定されています。

COVID-19は人類共通の脅威であり、世界中で一斉に数多くの視点から研究が行われました。これらの論文に目を通していくと、都市部では患者数が多く、重症化しやすく、農村部では、患者数は少なく、重症化しにくいことがわかりました。