【前回の記事を読む】滑る仕掛けとスタンガンで準備万端!? 今朝まで恐怖に潰されそうだったが、ニヤっと笑った
第一章 浩、狙われる!
少し落ち着いて、二人が紅茶を飲んでいるとノックの音がした。浩はビクッとして良を見た、良は囁き声で
「私は其処のキッチン横に居ますから安心して対応してください!」
と言って奥へ引っ込んだ。
浩は黙ってその動きを追っていた。又ノックがして、
「田賀さん! お届け物ですよ! と言ってももうご存じだと思いますが、お持ちのカバンを少し拝見したいのですが。私はそのカバンの持ち主の同僚、山田と申します。宜しくお願いします」と言った。
浩は黙って聞いていた。すると、
「田賀さん! ご在宅なのは分かっています、先ずは少しドアを開けてください!」
と再度言った。
浩は良を見た。それに答えるように良が頷くと浩は、
「ちょっと待ってください! 急に来られてカバンと言われてもどちらの会社の方ですか?」と聞いた。
「ネオ香港エクスプレスという運送業の会社です。うちの社員が大事なカバンを運送途中でロストしたシグナルが出ましたので、急いでそのシグナルを追って来ました。シグナルは間違いなくこの部屋に有ることを示しています。田賀さんも他人のカバンを拾われて困っているでしょう! 一度先ず見せてください。お願いします」
「よし!」
と小さく声を出して良へ向かって頷くと、
「今、開けますから……」
と言って出入口の方へ行き、ドアチェーンを掛けて鍵を外してドアを開けた。
ドアの外に工事ジャケットを着てがっしりした身体で、薄いブラウンのサングラスをかけ、変わった色の毛で出来た帽子を被った新橋のホテルで見た男が立っており、
「ネオ香港エクスプレスの山田です。是非カバンをお見せください!」と言った。
浩は意を決して一旦ドアを閉め、チェーンを外し居間の方へ下がりながら、
「鍵は外しましたので、では中へ入って確認してください!」と言った。
余はゆっくりとドアを開けて中を覗くと、この男の家は雑然としてゴミ溜めみたいだな、と感じながら黙って入った。
直ぐ部屋の中に立っている男の傍にカバンが有るのを見つけ、靴を履いたまま玄関から上り口の方へ足を踏み入れた途端、足が滑って前のめりになった。其処へ角材が滝のように落ちて肩や背中に当たり「ドシャン! ガシャン!」と大きな音が響いた。
「わあ!」
と声を出して倒れた。顔を上げると部屋の男が手に布の端のような物を握って立っていた。余は、
「何すんだ! コノヤロー」
と言って必死に立ち上がり、浩の方へ痛い左足を引きずりながら追って来た。