食事を終えると、また湯を沸かして茶を飲み、横になってコンロの火を眺めながら身体を緩めた。しかし火を焚いているにも関わらず凍てついた外気に触れているテントの側面からはしばしば冷気を感じ、ブルッと身体を震わせた。

「先行パーティーのトレースがあった分、少し早かったな」と、鬼島が言った。

「そうっすねぇ」

川田はコンロの火を見つめながら答えた。

「しかし、最後のルンゼの雪壁はいつ崩れるかって感じで、生きた心地がしませんでしたよ。あの斜度だと新雪が乗ったら一気に雪崩れますよね」

「まあ、そうだったな……」鬼島も目を緩めながら火を見つめていた。そして、「まあ、あんなもんだ」と続けた。

まもなく睡魔が襲ってきた。鬼島の「さて、寝るか」という一言に促されてシュラフ(寝袋)とシュラフカバーを広げ、身を潜り込ませた。朝から動かし続けた身体は猛烈に睡眠を欲しており、シュラフに入るや一気に深い眠りへと落ち込んでいった。

ピピピピッ、という腕時計のアラームで目が覚めた。

時刻は午前四時。闇の中、頭まで被ったシュラフのすぐ外に置いたはずのヘッドランプを探り出してライトをつけ、凍てつく寒さに耐えながらシュラフから這い出した。炊事用のスペースを確保するため、すぐにシュラフとシュラフカバーを畳み片付けた。コンロの火を焚くと、テント内の気温が一気に高まり、再び気が緩んだ。

コッフェルに雪を入れ、コンロにかけて湯を作り、簡単な朝食を取った。広げた荷物をまとめ、ザックにパッキングし、テントを畳むとちょうど五時だった。鬼島はザックのポケットからラジオを出し、五時から始まる気象通報を聞くためにチューナーをセットした。

次回更新は1月11日(日)、8時の予定です。

 

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