【前回の記事を読む】人類はいずれAIの奴隷と化す!? AI開発を無規制に許すリスクとは…技術の発達は人類にとってプラスかマイナスか…
序
さらに一歩進めて考えると、AIは、知能の面で人間を追い越すレベルにまで発達し、ある意味では人間と似通った存在になりつつあることがクローズアップされてきます。
そこに、人間とAIとが共通して持っている性質は何か、それからどういう点では違うのかという、いわば原点に立ち返る考察を行う意味が出てきます。そういった考察が、ひいてはそもそも人間とは何なのかという問いかけに繋がっていきます。
本書は実用書ではなく、そうした本質論を原理的、哲学的に、また学際的に見ていこうとするものです。
AIについてはさまざまな学問分野が関わってきます。コンピューター科学、認知科学、メディア論、情報理論、心理学、社会学、さらには人類学、生物進化論、物理学、それに数学も関わってきます。
なぜそれほどいろいろな分野が関係するのでしょうか。それはAIのことやAIと人間との関係について突き詰めて考えていくと、そのそれぞれの分野に視点を広げざるを得なくなるからです。
AIに関連するそれぞれの代表的な学説は、本書の中で関連がある範囲で概略を紹介します。そして、それぞれの分野が接点を持って繋がってきます。それが単なる知識の羅列と映るか、あるいはそれぞれがパズルのピースとしてはまると感じていただけるかは、本書を読まれる方に委ねたいと思います。
そこでは、各々の分野を個別に専門的に掘り下げることよりも、むしろ分野横断的、統合的に考える中から、人間とは何か、人間と世界との関係はどう捉えるべきなのかといった哲学的な視点が浮かび上がってきます。哲学的な考察が必要なのは、まだ科学では解明し切れていない問題が関係するからです。
そういう哲学的な考察からは、疑問への答えや結論は直ちには得られません。なぜなら、哲学の役割は、科学では未だ解明し切れていない問題について、今後解明が模索されていくべき道筋と視点を考えることにあるからです。
特に本書のテーマに関係するのは人間の意識の問題です(意識については第3章で取り上げます)。そのような問題について哲学は問いを立て、それについてあり得る答えの可能性を探ります。そのために仮説を立てます。