視覚の衰えは気がつきにくいもの
突然発症する眼疾患や、事故などによる障害と違って、徐々に進行する白内障や老眼による視力の衰えは認識しにくいものです。そのため、「できる」と思っていたことが、じつは「できなくなっている」ことに気づかないことも起こりえます。これは視覚障害に伴う事故やトラブルのリスクを増大させる要因となります。
これとは逆に、視覚の衰えに気づいていても、歳とともに眼が見えにくくなるのはある程度やむをえないと、放置しておく方も少なくないようです。
眼科医としてはどちらも残念なことで、ご自身の変化に注意深くなること、積極的に改善・治療することを心がけていただきたいと思います。
白内障手術によって得られるメリットは多岐にわたります。視覚の衰えによるリスクを軽減させることもそのひとつです。
たとえば、視覚障害によって転倒の危険は2.5倍になり(米国/英国老年医学会)、骨折・転倒は介護が必要となった原因の10.2%を占めるというデータ(国民生活基礎調査)がある一方、白内障手術後1年間で転倒事故が34%減少したという統計があります。
高齢になっても、足腰の衰えはスポーツジムに通うなどして改善することができますし、リハビリ効果も現れます。こうした体の機能維持・向上とは違って、眼の機能を自分で意識して維持することは困難です。
これに対して、眼特有の障害とそれに伴うリスク要因を根本から改善できるのが白内障手術です。
特に近視や乱視、老眼などの「屈折(くっせつ)異常」も改善できる多焦点眼内レンズを使用した白内障手術は、全医療ジャンルのなかでも類のない、アンチエイジング効果を有した画期的な医療技術。私が本書で多焦点眼内レンズを強く推(お)すのは、まさしくこのメリットを多くの方に体験していただきたいと考えるからです。
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