【前回記事を読む】【阪神タイガース・村上頌樹投手】0勝からMVPへ——“村山超え”を可能にした投球フォームを徹底分析!
ピッチャー編
(5)村上頌樹投手……「高さ」を生み出して、錯覚を生み出す
浮くボール
ここから村上投手は「高さ」という武器を使ってきます。
村上投手の身長は175cmとNPBのピッチャーとしては、高い方ではありませんが、高さを活用できる「ピッチングフォーム」を構築しています。高いところからボールを「リリース」する方が、バッターにとっては打ちにくくなります。
バッターは、バットでボールを捉えなければなりませんので、バット操作が難しくなると打ちにくくなります。ボールに高さの角度がそれほどついていなければ、「アッパースイング」をするにしても、さほど上へ向ける角度をつけなくても、ボールに「コンタクト」できますが、高いところから来るボールに対しては、バットの上向きの角度調整は困難です。
また低めのボールを打とうとすると、本来は地面の下から「アッパースイング」をしなければ「コンタクト」が難しくなります。当然そのようなことはできませんので、バッターのつらいところです。
もう一つの「高さ」の活用は、ボールを浮かすことです。ボールを上から下に、障壁なく思い切り腕を振り下ろしてボールを切って「リリース」することができれば、ボールに揚力がはたらきます。そのことで、ボールは「ポップ方向」のボールとなります。村上投手が活用しているのはこちらの方です。
バッターにとっては、そのようにピッチャーに投じられると、ボールの軌道が思っていた軌道より高い軌道に感じられます。思っているよりボールが「垂れて」こないのです。
そのことで、バッターに錯覚を与えることができます。また高いところから、その分重力の力を得てボールを切りますので、ボールに変化が富みます。ストレートを投げても変化します。
バッターにとっては、ボールの軌道が自分の思っている軌道と異なりますので、その修正が必要となります。その修正はバット操作で行わなければなりませんので、その分打ちにくくなります。
落ちるボールを例にしても、軌道は自分が思う軌道より高く進んで来ますので、その修正を掛けている間に、今度は軌道がいきなり落ちるので、軌道の上げ下げについていくのが困難となります。