二人の会話を聞いていた美代子は「私も時間つぶしにフィットネスに行こうかなと考えているの。最近たまプラーザ駅の郊外に“グリーンジム”が出来たの。親会社が大手私鉄で田園都市線沿線の奥様連中をターゲットにしていると聞いたわ」
花帆が「美代子行きなさいよ。さっき少しストレスが溜まるといっていたから、丁度いいよ。体を動かすと血液の循環が良くなり、気分がすっきりして、せめてフィットネスに通っている間は余計なこと考えないで済むじゃない?」
「そうかしら。花帆はやったことあるの? 結婚する前に三年間ほど通ったよ。私はホットヨガが好きだった。蒸し風呂みたいな部屋の中で体を動かすと体内の悪い毒素が汗になって出ていくみたいで、終わると気持ちがすっきりしたよ」
「私、着るものがないの」
「もうおばさんだから上はTシャツに下は半パンでいいのよ。今更格好つけなくていいのよ」
「そうだよね、それなら、持っているわ」
結衣が「私も行ってみたいわ。でも今は無理ね。子供が小学校に上がったら考えようかな。たまプラーザなら近いし、美代子にも時々会えるかもね」
三人は、傍から見ると幸せそうな若奥様達に映っているかもしれないが、自ら他人には言いたくない心の闇を抱えている。二年前に突然美代子が結婚すると聞いた時は、花帆も結衣もびっくりした。久しぶりにカフェ“花梨”で会った時もそんな素振りを見せなかったから美代子の心境の変化を聞きたいと思っていた。
次回更新は12月12日(金)、19時の予定です。
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