店員さんが

「分かりました」

と言い会釈をして下がった。

「時の経つのが早いよね。こうして会うのは二年振りよ。だんだんおばさんになっていくわ」

と美代子が言うと、花帆が

「すでに四十歳のおばさんよ」

と明るく屈託のない表情で笑った。

「美代子、結婚生活に慣れた? 違う環境に入っていったから心配していたのよ」

と花帆がどんな生活ぶりか知りたくて話を振ってきた。

「当初、想像していた生活とは少し違ったわね。主人との接点が少ないの。家には二十年来の家政婦さんがいて、主人の身の回りのこと、全てやってくれるから、私はただの同居人というところかな」

「身の回りのこと、と言うと?」

「入浴時の介助や毎朝食後の散歩、そして月一回のリハビリなど、だから私は主人の体にふれる機会も少ないの」

「家政婦さんの年齢は、若いの?」

「美月さんといって、私たちより少し上で四十五才ぐらいかな? 独り身だから若く見える」

次回更新は12月11日(木)、19時の予定です。

 

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