はじめに 今こそ、物流新幹線!
自動運転物流で列島改造
「物流破綻の危機」が叫ばれるなか、今ひとつ国民の意識は薄い。ドライバー不足から、国は、2030年には36%の物が届かなくなると言っている(「フィジカルインターネット・ロードマップ」フィジカルインターネット実現会議)。それが本当なら、米不足どころではなくなる。
さらに、高速道路での物流の自動運転化(「自動運転物流」)に至っては、知る人もほとんどいない。
消費者目線で見てみると、スーパーの棚で欠品が相次ぎ、いつも買っていたものを見かけなくなる、首都圏・大都市圏の消費者は、今のような豊かな消費経済を享受できなくなる、そんな時代が、近い将来にやってくるということである。
私は、「自動運転物流」が「物流破綻」を救い、「日本経済を若返らせるベスト解」だと考えている。かつて、新幹線は、人流で日本列島を高速で繫ぎ、人を中心に日本経済を活性化させた。今度は、自動運転による物流で日本列島を繋ぎ、物の対流で日本経済を生き返らせる。
筆者は、この構想を「物流新幹線計画」と名づけ、その実現を目指して長年活動してきた。そして、「自動運転物流」の実現は、行きつくところインフラ整備だと思い、早くからこの分野に取り組んできた。「高速道路直結型物流施設」(第7章で詳説)というコンセプト作りから、実際の開発・行政交渉まで、ほとんどすべての方面に首を突っ込んできた。
それぞれの専門家ではないが、インフラ整備の観点からだいぶ全体を俯瞰(ふかん)して見えるようになった。
そして、そのなかで、人手に頼らない基幹物流体系(「物流新幹線ネットワーク」)を構築しなければ、日本の産業と消費経済は維持できないとの確信を持つようになった。
最近、「自動運転物流」のビジネス化は、やっと曙光(しょこう)が見えてきた。しかしながら、今が「卵が雛にかえる」ちょうどその時に当たり、この時点の舵取りいかんで、成鳥にもなり、雛にもかえらず終わってしまう、まさに、その岐路にある。