響きの中の生命
この世界には、はじめから動きがあった。
震え、揺らぎ、めぐるリズム。
星々は静かに旋回し、波は岸を打ち、
私たちの体内では、いまも心臓が踊っている。
踊りとは、ただの表現ではない。
それは、生命そのものの記憶であり、
宇宙が生み出した「動き」の、一つの「形」。
私たちは踊りながら生まれ、踊りながら生きている。
感情は震えとなって身体を通り、
言葉になるよりも早く、誰かに届いてしまう。
「踊ること」は思考の前にある。
それは、感じること、つながること、
そして、世界と響き合うこと。
この本は、そんな動きの声に耳を澄ませ、
言葉を超えて語られる何かに触れようとする旅である。
著者
はじめに――踊るとは何か?
あなたにとって、「踊る」とは何でしょうか? この問いに、すぐに答えられる人は少ないかもしれません。実は、私自身もずっとこの問いを抱え続けてきました。
本書では、あえて「踊り」ではなく「踊る」という動詞に焦点を当てて、この問いを考えていきます。なぜなら、「踊り」という言葉には形式化された様式や舞台芸術のイメージがつきまとう一方で、「踊る」という言葉はより根源的で、生きた身体の動きそのものに近いからです。
たとえば、「蝶が舞う」「木の葉が舞い散る」といった自然の中の動きや、 「踊るような気持ちになる」といった感情の高まりにも、「踊る」という言葉は使われます。
つまり、「踊る」とは、人間だけのものではなく、自然の現象や生きものの営みの比喩としても使われていて、もっと根源的な「動き」に通じる何かがあるのではないでしょうか。では、「踊る」という行為を、私たちはどのように捉えればよいのでしょうか?