【前回の記事を読む】初期の段階では自覚症状がほとんどなく、気づかないまま進行している病気。新たな国民病と言われているその病気は…

第1章 腎臓病は静かに進行する国民病

腎臓病は年々増加しており、進行すると命に関わる深刻な病気です。まずは、腎臓が私たちの体でどのような役割を果たしているのかを理解することが大事です。次に、腎臓病がどのような病気であるかを見ていきます。次の章の話題であるがんと似ている点や異なる点を考えながら読んでみてください。

腎臓は体のバランスを保つ、縁の下の力持ち

人は食べ物や水分を体に取り入れ、不要なものを体外に排出しています。さらに、人の体の中では毎日新しい物質が作られては、壊されています。しかし、外から体を見ても何も変わっていないように見えます。

私たちの体がほぼ毎日同じ状態を保つことができているのは、腎臓によるところが大きいのです。腎臓が正常に働くことで、食べ過ぎや飲み過ぎがあっても、急に体重が増えたりすることはありません。

腎臓は人の拳(こぶし)ほどの大きさで、背中の左右に1つずつあります。主な仕事は血液をろ過して尿を作ることです。腎臓には「糸球体」と呼ばれる血液をろ過する装置が約100万個あり、ここで血液中の老廃物や水分をろ過して尿のもとになる原尿を作ります(19ページの図)。

この原尿は「尿細管」という管に運ばれ、そこで体に必要な物質が再吸収されます。最終的に、不要な成分だけが含まれた尿が体外に排出されます。腎臓は尿を作るだけではありません。腎臓は血圧を調整したり、赤血球を作るホルモンを分泌したり、骨に必要なカルシウムの調整なども行っています。

すなわち、腎臓は他の臓器と連携しながら体のバランスを一定に保つ司令塔のような役目もあるのです。腎臓を部屋にある物で例えて言うと、空気をきれいにし、温度や湿度も常に一定にしてくれる空気清浄機兼エアコンのようなものかもしれません。