【前回の記事を読む】まだ意識があった。死に向かうためのエネルギーかもしれないが、熱量を持っている自分に気づくことができた
奇跡の贈り物~次元を超える絆の物語~
「食事しないか?」
オルガは明るく声をかけた。
「うん、行く。うどん食べたい」
チッケは素直に行くことにした。
店に入ってオルガが椅子に座る瞬間、うどん屋の椅子がオルガの手元を離れて後ろに動いたのをチッケは見ていた。尻餅をついたオルガを心配するよりクーカの仕業を直感したチッケは思った。
「あれ! クーカはやっぱりいつもそばにいるってことだ!」
クーカはほんの一瞬オルガにジェラシーを感じたことを後悔した。
「ご免よ、オルガ。チッケと飯を食えるお前はいいなあと思ったら、お前の手から椅子を滑らせてしまったみたいだ」
そして
「俺の意識は瞬間的に強いエネルギーを持ってしまうのかもしれない」
クーカはそうとしか思えない状況を作ってしまっていることに驚くしかなかった。
同じようなことがその後も起こった。
チッケはプリンターを新しく買い替えて設置を業者に頼んでいた。来てくれたスタッフは背が高く、チッケは見上げる時の顎の角度でクーカを思い出していた。
並んで立つとスタッフの胸の辺りでチッケの背丈が隠れるので、チッケはクーカが風避けになってくれたことを思い出した。
設置と設定が終了して二階の部屋の階段を下りる時、あと四段もある階段をスタッフが突然転げ落ちてしまった。クーカはギョッとして焦った。
「君はいいね」
チッケと並んで話をしてチッケの頼みを聞いてあげられるスタッフを、クーカは凄く羨ましいと思った。クーカは一段だけのつもりだったのだがスタッフの踵を滑らせてしまったのだ。
痛そうに足首を揉んでいるスタッフに
「大丈夫ですか?」
と声をかけるチッケは、心配な顔を向けるより目をまん丸くして心から驚いていた。
「確信! クーカ!」
とチッケは小声で言いながら小さくガッツポーズをして、初めてクーカにテレパシーを送ってみた。
「クーカがいてくれていることわかってるけど、これはやり過ぎでしょ!」
クーカからの返信テレパシーはなかった。
ウイマはクーカとチッケの娘のような存在で、時々一緒に出かける旅行では笑ってばかりいるような朗らかな女性だ。数年前の旅行先のマドリードで、スペイン語の勉強をしながらツアーガイドのアルバイトをしていたウイマに、クーカが旅行ガイドを頼んだのが出会いの始まりだった。
ウイマはどこにいても手紙を書いて二人に楽しい報告をしてくれた。自然と付き合いも長くなっていた。