第二章 サライの生い立ち
ここに一人の若者がいる。純粋な心を持ち、真実を愛し、仲間のために生きる勇気を持つ。名は、サライ。彼は、星の国の一貴族の出身である。アライ族に属する。アライ族は、かに座大星雲を拠点とし、宇宙の様々なところで生じる問題を解決する勇敢な部族である。
サライは、物心ついたころから、武術を教えられてきた。幼少の五歳のころには、同年代の仲間たちは相手にならず、十三歳ほどの人たちに交じって、あらゆる武術で鍛えられていた。父親であり師匠であるムライは、自分の息子に対していつも、厳しくも優しいまなざしを向けていた。
ある時、正攻法のみで戦おうとするサライに対して、武器を持たずして戦う方法について教えた。ムライは、次のように語る。
「サライよ、武器に頼ってはならない。武器を取る者は、武器によって滅びるのだ。お前の真(まこと)の心を持って戦いなさい」
「真の心ですか?」
と、サライ。
「そう、真の心だ」
「それは、どうすればよいのでしょうか、父上?」
「あなたの心に問いかけるのだ。……わが血にて、えいあのかぎり……」
と、ムライは教える。
「その言葉の意味は、何でしょうか? 父上」
「今は、わからなくともよい。これから修行を重ねる毎に、その意味を悟る時が来る。それまでしっかりと修行を重ねるのだ。よいな」
「わかりました。父上、そのようにいたします」
サライは、父の教えの通り成長し、戦闘能力を増し加えていった。