長年にわたり人が築き上げた信用を評価した営業権は、その活動を評価した資産として認めることはできます。人の英知を注いでできあがるソフトウエアは、人によってもたらされた資産といえます。同様に研究費、開発費も資産としてあげられます。
しかし、営業権は営業譲渡や株式交換、合併・買収などを行ったときに得た資産や負債と支払った額との差額として表現されるにとどまり、決算ごとに認識されるものではありません。
また、ソフトウエア、研究費、開発費などは人の英知を具現化した数字であり人的資産に近いものといえます。それらに投じた費用は資産として認識されます。つまり、人が知恵を絞ってつくり上げたソフトウエアや研究は資産となるわけです。
しかし計上された金額は過去の成果に対するものであり、未来の資産ではありません。流動資産、固定資産は「会社の利益を獲得するのに必要な資産」と定義されます。物理的実体の有無によって有形資産、無形資産と分類されていますが、物理的実体のある“人”がその対象になっていないのは、おかしなことです。
次に負債の部を見てみましょう。流動負債には、支払手形、買掛金、短期借入金、預り金、 未払金、未払法人税等があります。ここにも人に関する項目は見当たりません。
続いて固定負債を見ましょう。社債や、長期借入金、退職給付引当金が記載されています。ここではじめて人と関係した項目が出てきました。
退職給付引当金は将来、社員が退職する際に支払われる退職給付金のうち、当期の費用として計上するための引当金に関する項目です。つまり退職に備えるための勘定項目であり、ある意味、人がネガティブな資産と捉えられるかもしれません。人を資産として捉えたときにはじめて計測される資産といえます。