その日、妻は歩行器を使用して30分かけて、休みながらゆっくり歩いた。歩行は少し前進した一方で、トイレや入浴にはまだ行けない。遠い、遠い世界。しかし生きるために明日も頑張る。

■2021年12月6日

午前は担当医の往診があり、以下の提言を頂いた。

「1月から3月末まで、旦那さんが24時間、離れないで介護ができるのであれば、1月から別の病院への転院は取りやめ、自宅療養を許可します。たとえ転院したとしても、新たな環境に慣れるストレスが奥様にかかります。

一方、ご主人の24時間介護条件は変わらない。不安定なメンタルを考えるとレンタル器具をご主人に渡し、自宅で療養。昼は通院がベストかもしれない。ただし、トイレもお風呂も一人では無理なので、プロの介護士が不在の自宅ではお2人の苦労は大きくなる。

全く動かない訳ではないため、介護認定はとりにくく専門ヘルパーも雇いにくいかも。全てを覚悟できるなら、奥さまの容態を今週見極め、来週には確定させましょう。リハビリの進行が悪い場合は再度方向転換します」とのこと。

お家に帰りたいという妻の唯一の願いは、看護主任に毎日お伝えしてきた。主治医も精神の立て直しを優先すれば、身体機能も続いて回復するかもしれないと、前向きに判断頂いた様子だった。妻は泣いて喜んだ。

次回更新は9月8日(月)、20時の予定です。

 

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