ボクの会社は「岡興産」という、ちっぽけな土建屋で、親父が創業者です。決して自慢できるような、会社じゃなく、そこの代表者だからって言っても、「本を出す」ような、世間様が思う「立派な人間」じゃ、決してありませんし、ボク自身も決してそんな驕った気持ちは持ち合わせておりません。

ただ、ムカシ、いっぱいござった、「田舎のおっもっしょい(オモシロイ)おっさんが、いなくなってしもうた。美しい自然もたくさん消えていってしもうた。そんなオイラがいただいた自然をこれからも残していきたい」そんなカワリモノの、つたない文章だとお笑いください。

イチロウ君のこと

そもそも、だいたいがいろんな本を書くと、「〇〇さんに捧ぐ」って部分がありますよね。そういう場合、故人に対してが多いかな。さて、アタシのバアイは、何をおいても、このバカ本の主人公である「イチロウ先輩」という架空の人物に敬意を表したい。架空の人物であるから、何をどう描いたっていいんだろうが、不思議なことにワタシの頭の中では、その風貌から、人間性まで、えらく具体的にその姿が浮かぶのである。

毎日、何かの「クダラナイ文章」を書いていこうと思ったとき、やはり物語の主人公、そう、ヒーローが必要だと思ったのです。こんな田舎のおっさんがやることなのであるから、映画のヒーローみたいなんは似合わない、そもそもそんなカッコのいい文章など書けない。たとえ、無理して書いたって、そんなのすぐに行き詰ってしまうし、アタシ自身が、自分らしくなく、オモシロクナイのだ。

だから、ここでのヒーローは、人間臭い、ちょいと、いや、だいぶんとエッチなのだが、肝心な場面ではなぜか「いい人」になってしまう、下衆な言い方すっと「目的を果たせないまま、一人……すごすご帰る」人物を思い描いてます。ま、実際、こりゃ、オイラそのものなのだが、自分自身を書いたんじゃ、これまたイマイチ、妄想力に欠けるのだ。

その風貌にピッタシの人物が、すぐ近くにいた。イケメンは、ヒーローとしては長続きしないから、まるで布袋さんか、大黒さんのようにデブで顔じゅうが円満であり、いっつも笑ってて、キワメツケは「この人が世界の創造主だったら、人類に〝戦争〟という言葉はなかったろう」と思うほどの、善人だった。

 

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