Chapter1 天変地異
観光案内所の正面に立つポール時計は、午後五時を示していた。文字盤を覆うソーラーパネルは太陽の光を受け、弾けるように光を溜めている。
会議場となっている竪穴式住居の中は重苦しい空気で満ちている。満座の視線は早坂に注がれていた。
「原始時代って、どういうことだよ」盛江は押し殺したように尋ねた。
早坂は努めて冷静に、
「現に起きていること、変わった環境などを考え合わせると、それ以外の推測ができない」
「道路が切れてるのはどう説明するんだ?」
「例えの上に仮説を立てるようで言いづらいが――」
「それはぼくが立てた仮説だから、ぼくから説明しよう」沼田が割り込んだ。「結論から言うと、あの道路の切れた面からこちら側が現代で、あちら側が原始時代という考え方だ」
座はどよめいた。失笑も交じっている。
「だが、もう少し周辺を調べてみる必要がある」沼田は周囲に構わず続けた。「数少ない情報を強引に結びつけても、非現実的な仮説しか引き出せない。もっと情報が必要だ。あの途絶えた道の先がどうなっているのか、探検して探ってみなくては」
「そうだね」林は同意した。「探検したら、近所の家に辿り着くかもしれない」
すると
「へ、へ、へ」
座の中から引き攣った笑い声が漏れ聞こえた。一同が声の方に目をやると、盛江が冷や汗を浮かべて肩を震わせ、笑いを堪えている。