第一章 ほうりでわたる
ほうりでわたる
舗装されていないその道は、まっすぐに伸びていて、はるか彼方は地平線につながっているように見えました。白い半袖シャツと半ズボン姿で、細い竹を持って立っている幼児、四歳のころの私です。
竹の先にはハエ取り紙についているような、ねばねばとしたものを塗り付け、その棒を持って、往還の真ん中に突っ立っていました。誰が四歳の子供に、竹の先にねばねばしたものを塗り付けることを教えたのでしょうか。
夏も終わりに近づき、赤とんぼが舞っていました。私は棒の先に赤とんぼが止まるのをじっと待っていましたが、なかなか止まってくれませんでした。
車はほとんど通らないその道に、隊列をなした車がやってきて、我が家の前に止まりました。日本軍の車両です。
左車線に戦車や軍用車がずらりと並んでいます。兵隊が車両から続々と降りてきて、周辺の民家に入っていきました。