例えばイチロー選手のように「人生一路」のごとく、小さい時から大きな夢を抱き、それを実現させてメジャーリーガーまで上りつめた人、あるいは音楽家として生きた人、その他にも生涯一つの道を歩み通した人も多いと思います。私の場合は、目の前に起こりくる様々な事象や、自分に課せられた宿命と格闘しながら、見通しのきかない「霧中の岐路」をさまようように、手さぐりで方向を選択し、進んできたような気がします。

しかし、その岐路で出会った多くの人々に支えられ、励ましを受けながら、これまで生き抜いてきました。この岐路で出会った方々の中で一人でも欠けていたら、今の自分はないでしょう。人生の岐路で悩んだり、迷ったりした時に助けてくださった方、道を教えてくださった方々に、感謝だけではすまされないほどの気持ちをこの書に記したいと思います。

そんな思いで、記憶をたどりながら、戦前、戦中、戦後と激動の時代を生きてきた一人として、幼少のころから現在までを蔵出しフィルムをたぐり寄せるように映し出し、プライベートなことまでさらけ出して、後に続く人たちのために記録として残したいと思い、本書に綴りました。

あらゆる事象が同時進行していくのが人生です。時系列だけでは追っていけませんので、時代の進行を意識しつつも、項目別に記述しました。

文中、私の仕事に関する専門的な用語が出てきますが、できるだけわかりやすく書いたつもりです。それでもわかりづらい箇所があればどうかご容赦ください。

登場人物については、私、家族、一部の方は本名で書かせていただきましたが、あとの方は仮名で記しています。企業名は実名またはイニシャルで表記しました。