日本の長寿村と短命村

一九三五年から一九七一年の三十六年間にわたり、北海道から沖縄の八重山諸島に至るまでの全国津々浦々九九〇箇所を、自らリュックを担いで訪ね歩き、各地で長寿に関する研究を重ねた人物がいました。「どうすれば長寿になれるか」を徹底的にスポット を当てた研究「日本の長寿村・短命村」の著者近藤正二氏(故東北大学名誉教授)です。

近藤教授はこの研究を始めた時には、「酒を飲むところは短命で、秋田県の人が日本 一短命なのは、どぶろくを飲むからだ」、「重労働のところは早く老化して長生きをしない」と考えていました。ところが、調査を進めると「酒を飲んでも長生きする」、「重労働をしていても長生きする。労働過重が短命にした事実がみられない」、「辛い仕事でも報われる」ことに気づきました。

そして、「結局、何が長寿・短命の分かれ道になっているかという実際においては、それが“食生活”であることは紛れもない事実です」と明言しています。

「日本の長寿村・短命村」の本に書かれていることを要約すると、米偏食、大食の村は長寿者が少なく、住民が一般に早老で、とくに脳卒中による若死にが多い。野菜不足で魚を大食する村は長寿者が少ない。とくに心臓疾患による若死にが多い。長寿村では必ず野菜を十分に常食している。果物は野菜のかわりをしない。海草常食のところは脳卒中が少ないということです。

このような事実から考えられる健康長寿食は、「一、米(精製穀物)を控える。二、魚、肉、卵もしくは大豆を毎日食べる。ただし大食しない。三、野菜は多く食べる。四、海草も常食する。五、食事はよくかんで味わいながらゆっくり楽しんで食べる。そして、毎日運動をすること」です。

さらに、「日々の仕事の中に楽しみを見出して、毎日すすんで働くのが真の楽しみであり、それがまた自然に健康長寿への道にも通ずるのです。もしそれが少しでも世のため人のためになるなら、真の生きがいでしょう」と締め括っています。(掲載元:島根 県立大学出雲キャンパス保健管理センター長の一言)