*

俺が小学校六年生になって思春期を迎え、異性に興味を持ち出した頃、中学生になった姉の胸が膨らみ、大人用ブラジャーをするようになった頃のことだった。俺は、いつもそばにいる「おばちゃん」が、時々煩わしいと思うようになっていた。

そんなある日の夕方のことだった。

「おばちゃん」はいつからか、家にいても昼間の明るいうちはいつもどこかに行っていて、俺のそばにはいなかった。そんな安心感があったのか、そろそろ日が沈む時間であるのも忘れて、俺が自分の部屋でマスターベーションにふけっているのを「おばちゃん」に見られてしまったのだ。いつものように俺のすぐ横に立って、いつものように彼女は微笑んでいた。

「おばちゃん」は、俺がトイレや風呂に入っているときには、決して出てくることはなかった。節度をもって接してくれていると思っていたのだが、よりによってこんな恥ずかしいところを見られてしまい、俺は気が動転してしまった。そして、ついきつい言葉を口走ってしまった。

「なんでそんなところにいるんだよ。もう俺の前に出てくるなよ!」

「おばちゃん」は、今まで俺に見せたことがない少し悲しそうな顔をしたかと思うと、そのままスウーっと消えてしまった。

次回更新は7月20日(日)、22時の予定です。

 

👉『心ふたつ[人気連載ピックアップ]』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】一通のショートメール…45年前の初恋の人からだった。彼は私にとって初めての「男」で、そして、37年前に私を捨てた人だ

【注目記事】あの臭いは人間の腐った臭いで、自分は何日も死体の隣に寝ていた。隣家の換気口から異臭がし、管理会社に連絡すると...