「じゃあ、和也は高校の部活は何にするんだよ」
「いや、それこそ颯斗が一番よくわかってるだろ。バスケに決まってる」
「なんでそんなにバスケに熱中できるんだよ」
僕の質問に窮するかと思ったが、和也は間髪入れずに答えた。
「そりゃあやっぱり、いいプレーしたら女の子がかっこいい!って言って喜んでくれるからかなあ」
「は? 何だよその単純で煩悩だらけの不純な理由は!」
「言い方ウケる! でも失礼だなあ。颯斗だってわかるだろ? 男なんて、女の子にカッコつけてなんぼじゃんか」
「いや、一緒にすんな。俺はどうでもいい。そんなこと」
刹那の沈黙が流れ、僕と和也はくすくすと笑い出す。真剣な話をしていても、いつもどちらかがくだらない方向へ話を向かわせる。これは小さい頃から何も変わらない。
「あ、颯斗。そういや今日の午後空いてる? 卒業式終わった後」
「うん。もちろん空いてますとも」
「よかった! 小学生の時、よく帰り途中に寄ってた花屋さん覚えてるか?」
和也の嬉々とした表情につられてか、跳ねているような陽気な空気が周りに生まれた。
「柏木さんの花屋でしょ? あそこは忘れないよ。よく一緒に店の手伝いもしてたし」
「そうそう! 卒業式終わったらさ、久しぶりに行こうぜ」
「は? なんで急に」
「いいじゃんか。中学の思い出を語りながら、エモくなろうの会ってことで」
「いや、意味わからん」
いいじゃんいいじゃんと、和也は連呼する。体を揺すられながら、僕は「わかったって」と、渋々了承した。
「おい皆木! ちょっといいか?」
「あ、はい!」
わざとらしく眉をひそめる僕の表情を無視して、和也は意地悪い笑みを浮かべながら、先生の元へ走った。
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