天候に恵まれた。二人とも世界遺産を巡るのは好きで、マカオの有名な場所をいくつか回った。行く場所ごとに、

「パパ、写真撮って、早く、早く」

私は微笑みながら、千恵が喜んでいる写真を何枚も撮った。撮った写真は、私たちの老後の楽しみの一つだった。

日が暮れて、夕食時になった。

「パパ、ディナーは?」

「ごめん、ごめん、予約してない。ホテル内のラーメンとビールで勘弁して」

「全く計画性がないんだから……」

肝心の食事を疎かにしたため、千恵が不機嫌になってしまった。私がいろいろと食事の美味しいところやレストラン等の調査を怠ったからだ。穴埋めに、ホテル内にあるカジノに行って楽しい時間を過ごそうと、私から、

「ねえ、カジノ行ってみない?」

と誘うと、千恵は

「いいね、行ってみよう。私の方が先輩、もう何回も経験してるから……」

と言った。

TVで見るような、トレーにシャンパンやジュースを載せたバニーガールが回っている。二人ともシャンパンをもらい、カジノの会場を一回りしてみた。私はカジノに行ったのは初めてだったので、少し舞い上がってしまっていた。

次回更新は7月11日(金)、8時の予定です。

 

👉『千恵と僕の約束』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】「浮気とかしないの?」「試してみますか?」冗談で言ったつもりだったがその後オトコとオンナになった

【注目記事】そっと乱れた毛布を直し、「午後4時38分に亡くなられました」と家族に低い声で告げ、一歩下がって手を合わせ頭を垂たれた