Chapter1 天変地異

その日の夕刻。

男子大学生の竪穴式住居に、全ての大学生、中学生リーダー川田、彼と仲良しの池上司(いけがみつかさ)と木崎茜(きさきあかね)が集まり、会議をした。

木崎は昨日の開会式で「お世話キャンプ」発言をした茶髪女子。池上は細身で背がひょろりと高く、やぶ睨みの無口な男子で、大学生とは口も利かない。それでも川田が連れてきたということは、それなりに信のおける人物なのだろう。林は川田を信じて座に加えた。本当ならこの会議は中学生も全員参加にしたかった。しかし、中学生たちは思いのほか動揺していたので、幹部のみ参加 させた。

重々しい空気の中、早坂が発言した。

「今から俺が言おうとすることは、突拍子も無いことかもしれない」

その目は真剣そのものである。一同固唾を飲んで次の言葉を待った。早坂は一つ咳払いをし、意を決するように目を上げ、

「俺たちはいま、原始時代にいるんじゃないかと思う」

「えっ?」

驚き――というより拍子抜けしたような声が漏れた。途端におしゃべりがはじまる。

「ンなばかな!」
「突拍子が無いにも程がある!」
「言うに事欠いて原始時代とは!」

「静かに!」早坂は遮った。「俺はSFまがいのことを言ったつもりはない。みんなから集めた情報を総合した結果、その仮説に辿り着いたんだ。あくまで仮説だ。だが否定のできない仮説だ」

仮説という言葉を繰り返す早坂。

確かに彼の手元には、その仮説を打ち立てるだけの情報が集まっていた。

時計の針をこの日の朝に戻そう。